不動産売買契約を締結する前に、宅地建物業者が必ず説明しなければならないのが「重要事項説明書」です。
文字通り売買対象物件に関する取引条件や重要事項が記載されており、買主は重要事項説明書の内容を確認した上で、この物件を本当に購入するかどうか最終判断をすることになります。
重要事項説明書とは
重要事項説明書については、宅地建物取引業法で、売買契約を締結するまでに「宅地建物取引士」が詳細に説明し、交付することになっています。
具体的には、下記の項目を満たすことが求められています。
- 説明時期 売買契約が成立するまでの間(交換、賃借の場合も含む)
- 書類作成者 宅地建物取引業者
- 記名押印 宅地建物取引士
- 説明対象者 売買の場合は買主
- 説明方法 宅地建物取引士が宅地建物取引士証を提示した上で口頭説明
一般的に、重要事項説明書に基づいた説明を聞いた結果、購入を見送る判断を行うこともあり得ますので、重要事項説明書は「売買契約締結までに」説明することが法律で定められているのです。
しかし実際には、売買契約当日に重要事項説明書に基づく説明を慌ただしく終わらせ、そのまま売買契約書に署名捺印して終了という流れが、不動産業界で習慣となっています。
重要事項説明書の内容をきちんと確認しないまま売買契約を締結すると、後からトラブルに発展することも多くなるため、近年では契約の2〜3日前に「重要事項説明会」を開催したり、事前に重要事項説明書を読んでもらうようにする不動産事業者も増えているようです。
新築、中古に関わらず、不動産契約に関する内容は難しい項目も多いため、重要事項説明書を事前にもらって、十分に確認しておくことはとても大切です。
疑問に思うこと、不安に感じることあれば、さらに詳しい説明をしてもらって下さい。わからないことをそのままにして、納得できないまま売買契約に進むと後々大きなトラブルに巻き込まれることになります。納得できない点があれば、遠慮なく質問しましょう。
重要事項説明書の記載項目
具体的に「重要事項説明書」には何が記載されているのでしょうか。
説明すべき重要事項は、宅地建物取引業法で細かく定められており、大きく「対象物件に関する事項」と「取引条件に関する事項」に分類することができます。
売買契約の対象となる不動産について、知っておかなくてはいけないことや事前に了承しておかなければいけないことが詳しく記載されていますので、しっかり確認してください。
重要事項説明書の記載項目
- 売買対象の不動産の表示
- 売主の表示
- 第三者の占有
- 登記簿に記録された内容
- 法令基づく制限の概要
- その他の法令に基づく制限の概要
- 敷地と道路の関係
- 私道の負担に関する事項
- 飲料水・電気・ガスの供給施設および排水施設の整備状況
- 工事完了時における形状・構造等
- 一棟の建物またはその敷地の権利や管理・使用に関する事項
- 建物状況調査の結果の概要
- 土砂災害警戒区域、津波災害警戒区域などに関する事項
- 石綿(アスベスト)使用調査の内容
- 耐震診断の内容
- 住宅性能評価に関する事項
- 売買代金に関する事項
- 売買代金以外に授受される金銭
- 手付金等の保全措置の概要
- 支払金または預かり金の保全措置の概要
- 瑕疵担保責任の履行に関する措置の概要
- 割賦販売にかかる事項
- 特記事項
「特記事項」には、契約締結後にトラブルに発展する可能性がある内容について、詳細に記載されています。補足部分ではなく、最も慎重に検討することが求められる項目と言えます。
大きな問題がない物件であれば、「特記事項」として何も記載されないこともありますが、買主に事前告知すべき問題を抱えている物件は少なくありません。
物件そのものの問題もあれば、周辺の嫌悪施設や騒音など環境に関する問題点、将来の環境変化など、様々な内容が「特記事項」「容認事項」「告知事項」などの名目で記載されることになります。
例えば、住宅地近辺の嫌悪施設については下記のようなものが考えられます。
- 高速道路等の主要道路、飛行場、鉄道、航空基地など騒音や振動が発生する施設
- 工場、下水道処理場、ごみ焼却場、火葬場など煤煙や臭気(悪臭)が発生する施設
- ガスタンク、高圧線鉄塔、危険物取扱工場など危険を感じさせる施設
- 墓地、刑務所、葬儀場など心理的に忌避される施設
どのような施設が嫌悪施設となるかについては、主観的な判断やイメージ、時代性もあって明確に決まっている訳ではありません。
説明する側の判断によるところも大きいため、一番トラブルの元になる部分でもあります。
騒音などは時間帯や曜日によって変わりますので、文字だけの情報に頼らず、契約前には現地を目で見て確認しましょう。違う日時で数回周辺を歩いてみると、今まで気付かなかった問題が見つかるかもしれません。
不動産を買うというのは金額も大きく、一生のうちに何度も経験することのない大きな取引です。しっかり書類に目を通し、現地を自分の目で確かめて納得できる契約にしましょう。
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